鳥取県人権条例

全国初の人権条例案鳥取県議会で可決
 鳥取県弁護士会などが「憲法違反の恐れがある」と指摘した「鳥取県人権侵害救済推進条例」が県議会最終日の十二日、賛成多数で可決、成立した。差別的言動や虐待、ひぼう・中傷など幅広い人権侵害を救済の目的とした条例は、全国でも初めて。来年六月に施行される。
 同条例案は、県議三十八人のうち三十五人が合同提案。
 本会議での討論で尾崎薫議員(えがりて)は「条例案は罰則を設けるなど逆侵害の副作用が懸念される。”人権侵害条例”とならないよう見直すべき」と反対を主張。杉根修議員(住民連合)は「問題点はあるが、県民とともに修正や補正をしながら、実効性を高め、人権尊重社会へ貢献できる」と賛成。採決では賛成三十四人、反対二人、一人が棄権した。
 議会終了後、片山善博知事は「(県民や県弁護士会などからの)懸念は、運用の段階で払拭(ふっしょく)していかなければいけないし、運用で疑義があれば、躊躇(ちゅうちょ)せず、条例の見直しを提案していく」と話した。
 最大会派清風の鉄永幸紀幹事長も「来年六月までにでも、運用上、構造的な問題があることが分かれば、十二月や二月議会ででも条例改正案を議員提案することにやぶさかではない」と語った。
 同条例は人権侵害の救済と予防が目的。差別的言動や虐待、性的言動、ひぼう・中傷、乱暴な言動などによる人権侵害を救済対象とする。知事付属機関の人権侵害救済推進委員会が調査し、助言や指導など救済措置にあたる。必要な場合は是正勧告をし、従わないと名前を公表、社会的制裁を加える。調査を拒めば過料を科す。
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/106528006.html

鳥取県総務部人権局
http://www.pref.tottori.jp/jinken/
とりネット > 人権局 > 鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例
http://www.pref.tottori.jp/jinken/jourei.html
議員提出議案第1号:鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例
http://www.pref.tottori.jp/gikai/teireikai/17-09/giinteian.htm

時限条例のようですが、最初から「修正や補正」を前提としているようでは、それこそ「人権侵害条例」ではないかと。
この類いの規制の問題点は、萎縮効果にあり、また拡張適用の余地を認める点にあるわけです。
「懸念は、運用の段階で払拭していかなければいけない」というが、それでは結局萎縮効果が及ぶのであるから、
条例段階で十分な担保が必要なのである。
それにもかかわらず、こういう条例をつくっている議員のみさんには、自分達に「人権尊重」の意識が欠如しているのでは?
という問題意識はないのだろうか?賛成した三十四人の憲法認識、人権意識の欠如を疑わずにはいられない。
もっといれば、無能だということだろう。これは決して根拠のない誹謗でも中傷でもない。
しかしながら、議員がひぼう・中傷にあたるということで、結果的に表現の自由が萎縮されるおそれもある。
そのような事態がおこらないという条例上の保障はどこにもない。

(救済の申立て等)
第17条 何人も、本人が人権侵害の被害を受け、又は受けるおそれがあるときは、委員会に対し救済又は予防の申立てをすることができる。
2 何人も、本人以外の者が人権侵害の被害を受け、又は受けるおそれがあることを知ったときは、委員会に対しその事実を通報することができる。
3 第1項の申立て又は前項の通報(以下「申立て又は通報」という。)は、当該申立て又は通報に係る事案が次のいずれかに該当する場合は、行うことができない。
(1) 裁判所による判決、公的な仲裁機関又は調停機関による裁決等により確定した権利関係に関するものであること。
(2) 裁判所又は公的な仲裁機関若しくは調停機関において係争中の権利関係に関するものであること。
(3) 行政庁の行う処分の取消し、撤廃又は変更を求めるものであること。
(4) 申立て又は通報の原因となる事実のあった日(継続する行為にあっては、その終了した日)から1年を経過しているものであること(その間に申立て又は通報をしなかったことにつき正当な理由がある場合を除く。)。
(5) 申立て又は通報の原因となる事実が本県以外で起こったものであること(人権侵害の被害を受け、又は受けるおそれのある者が県民である場合を除く。)。
(6) 損害賠償その他金銭的補償を求めるものであること。
(7) 現に犯罪の捜査の対象となっているものであること。
(8) 関係者が不明であるものであること。
(9) 前各号に掲げるもののほか、その性質上、申立て又は通報を行うのに適当でないものとして規則で定めるものであること。

(9)の内容をどう考えるかにもよるが、
「長・議員を含む鳥取県及び国の公務員は言論による人権侵害を理由に本条例による申立てをすることはできない」というべきであろう。
これらの者について救済が必要であれば、それは行政を経ることなく、司法で行うべきである。


また、人権侵害救済推進委員会の委員は、

(任命)
第7条 委員は、人格が高潔で人権に関して高い識見及び豊かな経験を有する者のうちから、議会の同意を得て知事が任命する。
2 委員のうち男女いずれか一方の数は、2人以上となるように努めなければならない。
3 委員のうちには、弁護士となる資格を有する者が含まれるように努めなければならない。

とするが、上記制限を設けないのであれば、上記公務員経験者は除外すべきであろう(再任を除く)。


さらに、積極的に裁判で争う機会を保障すべきである。

裁判
(司法判断の保障)
本条例に基づく公権力の行使対する国家賠償請求についての訴訟費用は、請求棄却の場合であっても県が負担するものとする。
ただし、その訴額が裁判所により著しく不当と判断された場合にはこの限りでない。
(司法判断に基づく委員の罷免)
請求が(一部でも)認容された場合、当該処分に関与した委員は当然に罷免される。
2 前項により罷免された者は、再度委員に任命されることはない。
3 1項の場合でもすでになした処分には影響をあたえない。

県との人権関係を考えると、これくらいのことは必要のように思います。


かなり妥協的に修正案を考えてみましたが、運用上の暴走のおそれは考えうるにもかかわらず、
それを放置している時点でかなり問題で、
すでに「運用上、構造的な問題があることが分か」っているのでは、と思います。
にもかかわらず、それを是正せずに可決したことをもって、すでに自己矛盾に陥っているといっていいでしょう。
問題点を問題点と思わず、改善せずに可決したのだから、是正などとても期待できないのです。