敷金返還請求事件最高裁判決

メモ。
最二小判平成17年12月16日平成16年(受)第1573号敷金返還請求事件

判例 平成17年12月16日 第二小法廷判決 平成16(受)1573 敷金返還請求事件
要旨:
 賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の特約が成立していないとされた事例

内容:
 件名 敷金返還請求事件 (最高裁判所 平成16(受)1573 平成17年12月16日 第二小法廷判決 破棄差戻し)
 原審 大阪高等裁判所 (平成15(ネ)2559)

 賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としたものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。
http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/VM2/3309D34DD6ABBFFD492570D90026971D?OPENDOCUMENT

「通常損耗補修特約」が明確に合意されていれば、賃借人が原状回復義務を負うことは否定されていない。
あくまでも原則論としては「賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する
通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませて
その支払を受けることにより行われ」るべきであるが、
これを負担させることも、私的自治からは否定されず、ただそれは例外的場合であるから、
「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に」されるべきということだろうか。
要するに、敷き引きはダメだといわないけれど、
賃借人がよくわからん敷き引きはダメですよ、という判決のようです。
ちょっと消費者保護派からすれば、中途半端な判決になるのかなぁ。