時刻表の著作権〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(13)〜

登録商標一覧?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(1)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050324/1111595733
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406/1112753849
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050410/1113141421
教育目的利用〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(4)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050411/1113154362
著作権侵害の慰謝料〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(5)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414/1113412430
企業とのやりとりメールの公開〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(6)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414/1113445853
漫画の引用?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(7)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050418/1113816642
著作物の利用と個人情報保護〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(8)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050422/1114144419
番組見逃した!他〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(9)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050427/1114583745
契約書の著作権著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(10)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050502/1114964637
美術の著作物の著作権著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(11)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050509/1115577829
著作権は誰でももてるか/ホームページへの音楽ファイル掲載〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(12)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050511/1115748685
※この一覧はあくまで「はてな」での質問に関連して回答したものです。
 著作権絡みの記述は他にもありますので興味のある方は検索してみてください。

あるバス会社がバス停に貼ってある時刻表「Copyright (c)○○バス」と入れ著作権を主張しはじめました。http://www.hatena.ne.jp/1063087074 を読む限り時刻表に著作権は無さそう(特別な素材を用いたりやデザイン性のある時刻表でも無い)ですが、このバス会社は何を主張しているのでしょうか。あるいは何かの法律が変わった結果表示をするのでしょうか。

この質問を期にいろいろ考えてみましたが、意外に奥深いような気がします。
確かに個別の時刻には何らの著作物性もありません。ただの時刻です。
日経平均株価が著作物だといってみても、それ自体金額であって、著作物性を否定すべきのと同じです。
http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050203/1107399230参照。
ただ、時刻「表」となると時刻が並んでいます。
ダイヤ編成に対する創意工夫に著作権の保護が及ばないのはもちろんですが、
たとえば、全体としてあらわせる過密ダイヤが弊社のお客さまサービスの思想を表現したものだといわれると、
時刻の集合体としての時刻表は思想感情を表現しているとも考えることができます。
(ただし、あくまで保護対象は「表現されたもの」ですので、その情報自体は保護対象ではなりません。)
もっとも、仮にここで思想感情を表現したであることを認めたとしても、その表現は創作性がなければなりません。


一方で時刻表のデータは単なる事実にすぎず、著作物性がないこと考えることも可能です。
もっともそれ自体著作物性がなくても、「素材の選択又は配列によつて創作性を有する」のであれば、
編集著作物として著作物性が認められることになります。


このように考えてくると、いずれに考えるにしても、ポイントは創作性ということになりそうです。
どのような時刻表表現に創作性があるかは問題ですが、
例えば、単純な罫線で囲みで、

○○バス △△方面行き
(平日)
5 1
6 1 30
7 1 15 35 57
8 1 20
9 0

という程度なら創作性はないといってもいいでしょう。
(もしかしたら最初のこの形式を使った人が著作権を主張するかもしれませんが…)
一方でデザイン化されていれば、それが全体で編集著作物として保護の対象となることもあるでしょう。
今回の質問で「特別な素材を用いたりやデザイン性のある時刻表でも無い」とされ、
このことばを文字通り受け取るなら、創作性が否定され、著作物性はないことになります。
一般的なありふれた形式では著作物性はないことになります。
ただし、裁判例上では創作性はかなり緩やかに解されているのようなので(東京高判昭和62年2月19日無体集19巻1号30頁)、
実際上は創作性がないという判断はなかなかないのかもしれません。


以上、創作性が否定されるなら仮に当該時刻表を写真の撮ってアップロードしても問題はないことになります。
一方で、創作性が認められるなら、そのような行為やそのまま書き写すことは問題になります。
ただし、繰り返しになりますが、単に時刻表のデータだけを別形式で表現することは問題ではありません。
時刻表に表現されている情報そのものには「表現」ではないので保護対象でないのはすでに述べた通りです。
つまり時刻表のデータを用いて自分で表現しなおすのであれば、何ら問題はありません。
なお、以上いろいろ書きましたが、
千野直邦・尾中普子『五訂版 著作権法の解説』6頁(一橋出版,2005)によれば、
駅構内に掲示された列車時刻表や料金表の著作物性を否定した判例があるそうです(昭和6年7月24日法律新聞3303号8頁)。
(この判例については機会をみて紹介したいと思います。)

追記(2005.6.27):
千野直邦・尾中普子『五訂版 著作権法の解説』6頁(一橋出版,2005)には、
「……、駅構内に掲示された列車時刻表や料金表(昭和6年7月24日新聞3303号8頁)、
 ……などの著作物性を否定した判例もみられる。」とし、凡例には「新聞=法律新聞」とあるのですが、
法律新聞3303号(昭和6年8月28日発行)を確認したところ、「法曹日誌は著作物なりや」というもので、
「駅構内に掲示された列車時刻表や料金表」に関するものではありませんでした。


最後に質問者さんの回答中での疑問に筆者なりに回答してみると、

ただ、ダイヤのオリジナリティがあるか勝手に転載できない問題と、著作権の関係を知りたいですね。
あと、fruitageさんの
>オリジナリティが全くないものは模倣しても侵害にならない場合がありますが、それは著作権がないのとは異なります。
についても解説は無いでしょうか。

について「オリジナリティ」云々が創作性という意味であれば、
オリジナリティ(創作性)がなければ著作物でないことになりますので、
著作権の保護の対象ではなく、著作権はないので「著作権がないのとは異なります」とはいえないということになります。

「バス会社の管理を離れるような行為を禁じる」のと、著作権はまた違った概念だと思いますが、いかがでしょうか。
「無断で変更」というのも何を変更するかですね。時刻表のデータである時刻を変更するのか、時刻表の表現の仕方を変更するのか。
前者ならそのような時刻表は無意味で誰も作ろうとせず(錯乱させる目的ならあり得ますが)、後者なら時刻表に創作性がある場合は認められそうでない場合は著作物でないと言えると思います。

「「バス会社の管理を離れるような行為を禁じる」のと、著作権はまた違った概念」ということで問題ないでしょう。
仮に虚偽の時刻表が作られた場合やダイヤ改正に際して漫然と旧ダイヤの時刻表はある場合には、
一般不法行為法で処理すべき問題であって、著作権法の守備範囲ではないように思います。


今回の回答でいえば、TomCatさんの回答がかなりわかりやすく妥当のように思います。
厳密には見解の相違や?と思うところはありますが、結論的にはおなじです。
ちなみに質問文中の

電車やバスの時刻表を自分でメモし、ホームページに載せることは違法でしょうか?  信頼に足るページを教えてください。

でいえば、回答4は良い感じです。ただし編集物でも創作性は必要ですので御注意を。