飲酒運転による公務員に対する懲戒免職処分の妥当性

ちょっと記事がよくばりすぎなのであちこちの話が入り乱れておりますが…。

ふらつく厳罰主義 飲酒運転職員処分で秋田県秋田市
 職員の酒飲み運転に厳しい姿勢で臨む秋田県秋田市が、公正な処分の実施に苦慮している。県は警察の取り調べを受けた職員を把握しきれず、運転免許証の提示義務化で違反歴を調べようとした秋田市は、職員組合などの反発で取りやめた。「飲酒運転で即、免職は重すぎる」と、青森県人事委員会が3月に出した裁決も、厳罰主義の公平性を考えるきっかけになっている。
 秋田県警が今年、酒飲み運転で取り調べた県職員2人のうち、その事実を上司に報告した職員は2月、懲戒免職処分になった。もう1人の職員について県は実態把握に手間取り、報告しなければ処分を逃れられる可能性を露呈した。
 逮捕されたならともかく、任意の取り調べで終わった職員については、「自主的な報告に頼っている」(県人事課)のが実情だからだ。職員に懲戒処分相当の行為があった場合、所属長は知事に報告する義務があるが、職員に所属長への報告義務はない。
 寺田典城秋田県知事は6月、「職員の報告義務を服務規程に盛り込む」との方針を示したが、結局は職員の良心に委ねられている。
 2003年5月、秋田県は酒飲み運転の処分に関する内規を改定。違反内容に応じて免職から減給まで幅があったのを、「原則として懲戒免職」と厳罰化した。02年度中に職員による5件の酒飲み運転が発覚したのを受けた措置だった。
 04年後以降、職員の酒飲み運転が6件も続いた秋田市も、悩みは尽きない。抑止効果も狙って5月、職場単位で免許証を提示させる荒療治に踏み切った。定期的に実施する方針だった確認作業は、「職員のプライバシーにかかわる問題」と市職労が強く反発し、中止せざるを得なかった。
 秋田県職労の石川聡委員長は「酒飲み運転を撲滅するのは当然だが、青森の例で分かるように、県当局と人事委員会で処分の判断が分かれ、自治体間の差も大きい。未熟な制度で運用される厳罰化には異議がある」と話している。


<メモ>秋田県警によると、県職員、市町村職員(非常勤、臨時を含む)や市町村議が今年、酒飲み運転をして任意の取り調べを受けたケースは13件(6月末現在)。ほかに公務員1人(鹿角市の消防職員)が逮捕された。昨年は逮捕者も含めて1年間で29件だった。
河北新報) - 7月11日7時5分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050711-00000010-khk-toh

飲酒(酒気帯び)運転しなければならない特段の事情(たとえば、山中のキャンプ上で飲酒してたら襲われて逃げるためとか)
があるような場合を除いては、「飲酒運転で即、免職」でもいいと思いますけどね。
少なくとも、現在においては、例外的な特段の事情がない限り、免職でも「重すぎる」ということはないように思います。
例外を一切考慮しないという意味では「飲酒運転で即、免職は重すぎる」といえますが、
どうやら青森県人事委員会が3月に出した裁決はそういう趣旨ではないようです。

青森県人事委員会ホームページ
http://www.pref.aomori.jp/jinji-i/

○記者
 飲酒運転が発覚したら免職にするという方針は、高知県が最初に打ち出して、青森県も全国に先駆けて取り入れたという経緯があると思います。今回の県の人事委員会の判断は、全国の都道府県の処分の平均値、相場、こういったものに比べて厳しすぎるという理由で修正しているわけですが、それは青森県が飲酒運転を撲滅するという公益のために、職員自ら厳しく律するようにと求めたその前向きな姿勢が覆された形になっているわけです。
 今回の決定で、飲酒運転について、職員の遵法精神がゆるんだり、県民に悪影響を与えるという恐れはないでしょうか。
○記者
 今回の人事委員会の決定の中では、県の要綱に拘束力はなく、懲戒権者の判断の目安を示したものと解されるとありますが、要綱ではなく、県議会で議決する条例などに格上げして、この方針を続けていくというお考えはございますか。
http://www5.pref.aomori.jp/seisaku/11416/attach00001.html

青森県人事委員会の採決については、記者とのやりとりから推察するしかないようなのですが、

○知事
 人事委員会からの裁決もまた、非常に、いわゆる働いている方々の立場を考えぬいた判断と考えるわけですし、私どもとしても、いかにあるべきかということは、大変恐縮ですが、もう少し検討したいと思っております。

とのこと。
理事者側からすれば、人事院委員会の決定を受けた形でのコメントで苦渋のもののように思うのですが、
人事院委員会が「働いている方々の立場を考えぬいた判断」として、飲酒運転許容の判断を示したのであれば、
いったいどういう「働いている方々の立場」なのかよくわかりません。
むしろ「青森県が飲酒運転を撲滅するという公益」の方が尊重できるように思います。
別に酒を飲むなとも、運転するな、とも言っていないわけで、どういう立場を尊重しているのかいまいちわかりません。
「全国の都道府県の処分の平均値、相場、こういったものに比べて厳しすぎる」というのが「働いている方々の立場」への尊重?
そもそも自治体なんて住民自治からは、それぞれ違いがあってもいいと思いますけどね。なぜ一律でないといけないのか?
そこは譲っても、民間企業も含めて「平均値、相場」を考慮していたものならそれなりに頷ける人も多いと思うのですが、
民間企業はどうなんでしょうか?
(民間より全国の都道府県の処分の平均値が重ければ、さらにそれより重く不均衡といえるかもしれませんが…。)


ところで、厳罰化(特に免職)ともなれば、自己申告なんてまずもって期待できません。
正直者が馬鹿をみる状態になっているようにも思われます。
免許証の確認は特に業務上運転する職員や車通勤職員には「職員のプライバシーにかかわる問題」ではないはずですが、
(むしろ役所には確認義務があるといってもよい。)それをどこまで一般化できるかは難しいのかもしれません。
それほどのプライバシー性はないように思うのですが…。
また、免許証提示を「職員のプライバシーにかかわる問題」という認識の人には役人をして欲しくない、
というのが、納税者のもつ感覚のように思います。
現在の飲酒運転の危険性に対する一般的認識を元にすれば、プライバシーで片付けていい問題ではないですし、
そのような人物が公務員をやっていることも問題と言わざるを得ないように思います。
「「職員のプライバシーにかかわる問題」と(秋田)市職労が強く反発し」たそうですが、
この労働組合は県民にどういうプライバシー性があるのか説明するべき責任があるといえるでしょう。
(別に県民に免許証を提示せよ、と言っているわけではないのですし…。)
まぁ、なんにも考えずに「プライバシー」と言っておけばいいというような安直な考えでしょうが…。
こういうところにも、公務員は自分等の生活を支える納税者というのも忘れているということが見えているように思います。