著作権侵害の慰謝料〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(5)〜

登録商標一覧?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(1)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050324#1111595733
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406#1112753849
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050410#1113141421
教育目的利用〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(4)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050411#1113154362

おもしろそうだったので回答してみた。

著作権侵害に対しての慰謝料の相場を教えて下さい。離婚などの場合の相場は見つけられるのですが、著作権についてはなかなか見つけられません。

著作権著作者人格権を含めるのはアリと思うが、慰謝料と聞いているので、あくまで精神的損害と考えた。
回答は、財産的損害と混同しているものが多い。というか自称弁理士さんまで混同気味。

6.回答者:hexium
弁理士です。
著作権を含む知的財産権の侵害事件の場合、具体的な損害額がそのまま賠償額(慰謝料)となることが多いです。

なんかわかったようなわからんような説明。紹介している判例を見ても、

H16. 6.25 東京地裁 平成15(ワ)4779 著作権 民事訴訟事件
(2) 同一性保持権侵害に基づく損害について
 証拠(甲14)及び弁論の全趣旨によれば,被告LECは,被告本間デザインの作成した被告各イラストを,平成11年から,のべ153点の書籍に使用して,販売したことが認められる。
 上記認定事実に,前記1(1)ア(ア)(イ),同イ(ア)(イ),同(2)ア,イ(ア)(イ)記載の認定事実を総合すると,被告らの同一性保持権侵害行為により被った原告の損害については,100万円をもって相当と認める(なお,著作者人格権の侵害による損害は侵害品の販売数の多寡のみによるものではないから,本件事案においては,平成12年12月末日からの遅延損害金を認める。)。
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/B5077EAE55733A5A49256F2B00306CB6/?OpenDocument

を読んでも、「具体的な損害額がそのまま賠償額(慰謝料)」という帰結にはならないと思うのだが…。
お気付きになったら補足をいただきといところです。
所詮はてなの質問と回答と割り切るのであれば別だが、
弁理士を名乗ってこの回答は少し残念な気がします。


さて、質問者も財産的損害を質問している可能性が全くないとはいえない(実際回答に満足している)が、
離婚を例にあげていることからすれば、精神的損害でいいように思う。(でも相場となると、養育費と混同かなぁ?)
参考:
http://www.fukazawa-office.com/risha.htm
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_shoshiki.nsf/$DefaultView/4E79CD03C8E3759449256D7200089881?OpenDocument
こういうこと考えだすと回答できないんだよねぇ。まぁ、そこは割り切ろう。


ということで、質問の真意はともかく、
ここでは「著作権(著作財産権)」「著作者人格権」侵害の精神的損害について。
はてな」での回答と重複するところがありますが…


相場とは違うが実際の傾向判断としては、類似事案を調べてみる、というのがある。
裁判所の「知的裁判権判例の検索」
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/$SearchForm?SearchView
で、
キーワードを「精神的損害」or「慰謝料」
権利種別「著作権」、訴訟類型「民事訴訟」で検索するのがいいかな?
キーワードをさらに加えれば、ある程度の絞りはかけられるかも知れませんが、なんせそれほど事例がない…。
ちなみに、一般的に判決文の最後の方にあるのが、裁判所の認めた「損害額」です。
くりかえしますが、損害賠償には、財産的損害と精神的損害(慰謝料)があります。
これらを請求する場合にはきちんとわけて考えるべきでしょう。


http://www.law.co.jp/okamura/copylaw/singai05.html
ここによれば、著作者人格権侵害については、慰謝料請求は認められるが、
著作権(著作財産権)侵害については、原則として認められないようです。
実際、「著作権侵害に対する慰謝料について」について、「財産権の侵害に基づく慰謝料を請求し得るためには,
侵害の排除又は財産上の損害の賠償だけでは償い難い程の大きな精神的苦痛を被ったと認めるべき特段の事情が
なければならないものと解される」とする裁判例がある。
H16. 6.29 東京高裁 平成15(ネ)2515等 著作権 民事訴訟事件
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/777138C6A3B4655F49256F2B00306CC3/?OpenDocument
すみません。例外的に認められた事例があるなら調べて紹介するべきなんでしょうけど…。


著作者人格権侵害に対する慰謝料はというと、
まず、

著作者人格権侵害で1億円という慰謝料が認められた例はなく
http://www.asahi.com/digital/apc/TKY200503290114.html

とする記事がある。
最近高額化しているとはいえ、名誉権侵害でもそれほど高くないことからすれば、
著作者人格権がそれほど高額にならないのもうなずける。
(一般的な人格権については、五十嵐清『人格権法概論』(有斐閣,2003)でもご参照ください。)
したがって、

3.回答者:yuppia
著作権の侵害での慰謝料は数万円から数億円まで多岐に渡ります。

も嘘となります。この部分を除けば回答になっていますが…。
もし慰謝料で数億円というのがあれば、教えて欲しいですね。


次に最近の裁判例をみてみよう。こうやって短時間に抽出してみると、
読みやすい裁判所(裁判官)と読みにくい裁判所(裁判官)の差がとてもよくわかる。

H17. 3.29 大阪地裁 平成14(ワ)4484 著作権 民事訴訟事件
エ 損害額のまとめ
(ア) 被告イシイに対する請求分       合計1000万2500円
 a 本件CD−ROMの複製権侵害の財産的損害  757万5000円
 b 本件CD−ROMの複製権侵害の精神的損害         0円
 c 本件CD−ROMの氏名表示権侵害の精神的損害     30万円
 d a〜cに係る弁護士費用相当の損害       78万7500円
 e ミスミのダウンロード販売に係る複製権・公衆送信権侵害による財産的損害                                                    34万円
 f ミスミのダウンロード販売に係る複製権・公衆送信権侵害による精神的損害                                                      0円
g ミスミのダウンロード販売に係る著作者人格権侵害による精神的損害                                                   100万円
(イ) 被告らに対する請求分          合計228万2500円
 a 本件ダウンロードサービスに係る複製権・公衆送信権侵害による財産的損害                                               107万5000円
 b 本件ダウンロードサービスに係る氏名表示権侵害による精神的損害                                                       100万円
 c 本件ダウンロードサービスサービスに係る同一性保持権による精神的損害                                                       0円
 d 弁護士費用相当の損害             20万7500円
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/F74A6557A2DC3A7449256FDB003C4801/?OpenDocument

この判決だけみても、必ずしも財産的損害と精神的損害がリンクするとは限らないようである。
ちなみに、上記判決の精神的損害についての判示をみておくと、

(2) 原告の損害について
ア 本件CD−ROMに関して
(イ) 複製権侵害行為の精神的損害について
 原告は,本件CD−ROMの制作販売による複製権侵害行為により100万円の精神的損害を被ったと主張する。
 しかし,前示のとおり,原告は,職業写真家であり,写真の使用料金の相場を十分に認識し,その交渉にも精通していたものであり,かつ,ビジュアルディスクの商品内容,とりわけCD−ROMの購入者が写真を基とするデジタル画像データを自由に複製・改変等することができることの説明を受け,これを十分理解した上で,被告イシイに対し,その販売を許諾したものである。したがって,原告は,自己の撮影した写真を基とするデジタル画像データをCD−ROMの購入者等が複製・改変することについて了承していたものであって,これについて原告が精神的苦痛を被ったと認める余地はない。
 上記事情を考慮すると,本件覚書による写真利用許諾契約が解除されたことにより,著作権フリーの画像素材集を利用した複製・改変行為等が著作権侵害行為と評価されることになるとしても,原告がこれによる財産的損害の填補を受けてもなお回復されない精神的損害を被ったと認めることはできない。
 また,本件覚書の文言上,ビジュアルディスクの全デジタル画像データの基となる写真のうち原告が著作権を有するものは原告写真144点に限られると解釈できることに鑑みると,後日原告からさらなる要求をされた被告イシイが,本件覚書を読み直して著作権に関する問題は既に解決されているとの回答を原告に対して行ったことが,直ちに被告イシイにおいて賠償すべき精神的損害を原告に被らせたと認めることはできない。さらに,本件覚書締結後,原告が販売組数を報告するよう被告イシイに求めていた事実は認められないから,被告イシイがこれを報告しなかったことが,原告に精神的苦痛を被らせたものということはできない。
 以上のとおり,本件CD−ROMの複製行為により,原告が精神的損害を被ったと認めることはできない。
(ウ) 氏名表示権侵害について
 本件覚書解除後における本件CD−ROMの制作販売行為は,著作者人格権たる原告の氏名表示権を侵害するものといえる。しかし,前記2(1)の認定事実によれば,原告は,ビジュアルディスクのCD−ROMに氏名が表示されていないことを当初より認識していたものであり,それにもかかわらず,ビジュアルディスクが著作権フリーの画像素材集であることなどの事情も踏まえて,氏名の表示を求めなかったのであり,また本件覚書を締結する際にも従前どおり氏名が表示されていなくてもよいと考え,黙示に氏名表示権を行使しない旨合意していたものである。
 したがって,本件覚書解除後における被告イシイの上記行為は,原告の著作者人格権(氏名表示権)を侵害するものであるということができるものの,上記のような本件覚書解除前の事情を考慮するならば,その精神的苦痛を慰謝するには30万円が相当というべきである。
イ 本件ダウンロードサービスについて
(イ) 著作者人格権侵害による精神的損害について
 原告は,被告らの本件ダウンロードサービスによって,原告の有する著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)が侵害され,精神的損害を被ったと主張する。
 本件ダウンロードサービスにおいても,原告の氏名が表示されておらず,また,本件CD−ROMの制作販売におけるものと異なり,本件ダウンロードサービスにおいては原告が権利行使を行わない旨の合意をしたことがあるという事情も認められない。これらの事情を考慮すると,被告らの氏名表示権侵害により原告の被った精神的損害は100万円とするのが相当である。
 なお,被告らの上記行為が原告の同一性保持権を侵害するものでないことは,前示のとおりであり,これを理由とする慰謝料請求は理由がない。

となる。

H17. 3.24 東京高裁 平成16(ネ)3565等 著作権 民事訴訟事件
2 原判決が示した争点2(原告の損害額)について
(1) 著作権侵害による損害額
 この点については,当裁判所も,合計60万円が相当であると認める。…
(2) 氏名表示権及び同一性保持権の侵害による損害額
 被告の公衆送信及び本件各地方ネットワーク局の各公衆送信においては,本件著作物の一部分を著作者として原告の氏名を表示しないで放送されたものであるところ,そのうち,平成13年7月10日放送の「ニュース プラス1」及び「きょうの出来事」においては,本件ウェブページ全体の映像を映した上で,そのナレーションにおいて「A氏のホームページ」と述べて,同番組を見た視聴者に対し,本件著作物の出所を明示しているかのように報道し,本件著作物につき,著作者として原告の氏名を表示しなかったにとどまらず,事実と異なる出所表示をしたものであり,氏名表示権の侵害態様は重大なものがある。
 そして,本件著作物は本件ウェブサイト上に掲載するために撮影された肖像写真であって,被告による放送に先んじて既に本件ウェブサイト上に掲載され,公開されていたものであるところ,番組において本件著作物における顔の部分は改変されていないにしても,本件著作物が,日本の国旗とコロラド州旗を背景に,テンガロンハット(いわゆるカウボーイハット)をかぶり,西部独特のジャケットを着たA元総領事の上半身の写真であるのに対し(当事者間に争いのない事実),放映された写真の中には,A元総領事の肩から上の部分だけをトリミングしてその周りに黒っぽい色の楕円形の背景を配したものがあること(甲12の1),そして,原告が本件著作物を撮影した目的は,デンバー総領事を好意的に紹介しコロラド州での日米友好のためにするものであって,当時の総領事の同意の下にて撮影したのが本件著作物であること,被告が本件著作物を無断で使用した報道の趣旨は,社会的問題になっていた外務省の不祥事に関連して不正疑惑の対象となる人物の顔写真として掲載したものであって,写真家としても活動している原告の創作意図に反するものであったこと,などの諸事情を総合すれば,被告の公衆送信及び本件各地方ネットワーク局の各公衆送信における本件著作物の氏名表示権及び同一性保持権の侵害による損害額(慰謝料)としては,60万円と認定するのが相当である。
(3) 弁護士費用
 原告が,本訴提起及び遂行のために弁護士を選任したことは当裁判所に顕著であり,本件事案の内容,控訴審の本判決に至るまでの審理の経緯その他諸般の事情を考慮すれば,原告に生じた弁護士費用のうち40万円については,被告の公衆送信権侵害・著作者人格権侵害の不法行為と相当因果関係のある損害として被告が負担すべきものと認めるのが相当である。…
(4) 損害額のまとめ
 以上をまとめると,原告が被った被告の著作権侵害による損害は計60万円,著作者人格権侵害による損害は計60万円,弁護士費用は計40万円であって,これらの合計160万円が原告の被った損害額となる。…
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/B83191DC222DB40249256FD2000F2547/?OpenDocument

H17. 3.17 大阪地裁 平成16(ワ)6804 著作権 民事訴訟事件
よって,原告…本件請求は,民法709条,710条の不法行為に基づき,無形的損害についての損害賠償55万円及びこれに対する最後の不法行為のあった日(被告サイトでの公衆送信の終わった日)である平成16年5月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は失当であるからこれを棄却し,原告Aの本件請求は,民法709条,710条の不法行為に基づき,精神的損害についての損害賠償55万円及びこれに対する最後の不法行為のあった日である同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は失当であるからこれを棄却し,主文のとおり判決する。
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/6352B976419969D649256FD2000A2599/?OpenDocument

ただし、この上記判決は不法行為の構成です。

H17. 3.15 東京地裁 平成15(ワ)3184 著作権 民事訴訟事件
(5) 原告会社の損害
したがって,原告会社の損害額は,次のとおり,4913万2214円となる。
4828万7709円+54万4505円+30万円=4913万2214円
(6) 原告Aの慰謝料について
原告Aは,本件作品の著作者であるにもかかわらず,被告により無断で本件作品を改変され,その氏名を表示されることなく,特典DVDとして販売され,本件プロモーション映像をテレビ放送等されたのであり,これによる精神的損害を被ったと認められる。
この著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)侵害による慰謝料は,本件に現れた一切の事情を勘案して,100万円と認めるのが相当である。
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/F2E81DEAAB45507349256FC7002C92CE/?OpenDocument

上記判決は、単に著作権侵害の損害額と慰謝料の額の結論の比較です。

H16.11.12 東京地裁 平成16(ワ)12686 著作権 民事訴訟事件
前記1に記載された認定事実を総合すれば,著作者人格権(氏名表示権)の侵害により原告が被った損害額(慰謝料)としては,20万円をもって相当と認める。

上記裁判は、著作者人格権侵害しか問題になっていません。

H16. 6.29 東京高裁 平成15(ネ)2467等 著作権 民事訴訟事件
(4) 著作権侵害に対する慰謝料について
一審原告らは本件各著作物の著作権侵害を理由に慰謝料の請求をしているが,財産権の侵害に基づく慰謝料を請求し得るためには,侵害の排除又は財産上の損害の賠償だけでは償い難い程の大きな精神的苦痛を被ったと認めるべき特段の事情がなければならないものと解されるところ,一審原告Dの本人尋問における供述及び同一審原告の陳述書(甲77)の記載など本件全証拠をもってしても,本件において,上記特段の事情が存するとまでは認められないから,上記慰謝料請求は理由がない。
(5) 著作者人格権侵害に対する慰謝料
一審原告A,同C,同D,同E,同F,同G,同Hが,本件各著作物を本件国語テストへ掲載する際に改変がされ,同一審原告らの同一性保持権が侵害されたこと,また,一審原告らの氏名表示権が侵害されたことは,前記引用に係る原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」4(1),(2)に認定のとおりであるところ,証拠(甲77,原審における一審原告D本人)と弁論の全趣旨によると,上記の一審原告らは,これらの著作者人格権侵害行為により精神的苦痛を受けたものと認められる。
 しかして,上記4(1)認定に係る改変の態様からすると,改変された箇所は,いずれも文章の意味内容を直接変更するものではない箇所も多いこと,上記4(2)認定のとおり本件国語テストに掲載された本件各著作物につき一審原告らの氏名は表示されていないが,上記一審原告らの氏名は,教科書によって容易に認識することができるものと考えられるから,読者が本件各著作物の著作者を誤解するおそれは少ないと考えられること,その他本件に現れた諸事情を考慮すると,著作者人格権侵害行為に対する慰謝料の額は,一審被告らそれぞれの侵害行為につき,一審原告Bは15万円,その余の一審原告らは30万円(ただし,一審原告らが同一性保持権侵害を主張していない一審被告の侵害行為については15万円)とするのが相当である。
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/1147F5E4A53E333249256F2B00306CC2/?OpenDocument

上記判決は、財産的損害の部分は、ややこしいので、省略してます。

H16. 6.25 東京地裁 平成15(ワ)4779 著作権 民事訴訟事件
(1) 著作権侵害に基づく損害について
原告が原告イラスト1の著作権の行使により受けるべき金銭の額は…合計825万円と認められる。
(2) 同一性保持権侵害に基づく損害について
上記認定事実に,前記1(1)ア(ア)(イ),同イ(ア)(イ),同(2)ア,イ(ア)(イ)記載の認定事実を総合すると,被告らの同一性保持権侵害行為により被った原告の損害については,100万円をもって相当と認める(なお,著作者人格権の侵害による損害は侵害品の販売数の多寡のみによるものではないから,本件事案においては,平成12年12月末日からの遅延損害金を認める。)
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/B5077EAE55733A5A49256F2B00306CB6/?OpenDocument

上記判決は、単に著作権侵害の損害額と慰謝料の額の結論の比較です。

H16. 6.11 東京地裁 平成15(ワ)11889 著作権 民事訴訟事件
以上をまとめると,原告が被った被告の著作権侵害による損害は計60万円,著作者人格権侵害による損害は計10万円,弁護士費用は計30万円であり,これらを合計すると100万円が原告が被った損害額となる。
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/70D25924CDCD649049256F2B00306C9A/?OpenDocument

上記判決は、単に著作権侵害の損害額と慰謝料の額の結論の比較です。

H16. 5.31 東京地裁 平成14(ワ)26832 著作権 民事訴訟事件
(2) 著作権侵害による損害
前記のとおり,被告らが被告小説を執筆し,又は印刷,頒布した行為は,Aが有していた著作権(翻訳権)を侵害したものである。
ア 基礎とすべき価格
  前記2認定のとおり,被告小説の価格は1400円であるから,これをもって基礎とすべき価格と認める。 
イ 部数
  前記2で認定した事実によると,被告会社は被告小説を3000部印刷したのであるから,これをもって損害の基礎とすべき部数と認める。
ウ 利用の割合
  証拠…によると,本件詩の翻訳文が被告小説において掲載されている部分は,前後の余白行を含め,本件詩(1)は25行,本件詩(2)は11行,本件詩(3)は22行,本件詩(4)は18行,本件詩(5)は19行,本件詩(6)は11行,本件詩(7)は22行,本件詩(8)は13行,本件詩(9)は20行で,合計161行と認められる。そして,被告小説の1ページは16行であるから,約10ページ分に本件詩が利用されていることになる。被告小説の総ページ数は253ページであるから,利用の割合は約10/253となる。
エ 使用料率
  証拠…及び弁論の全趣旨によれば,書籍の印税は一般に6ないし15%とされ,10%としているものが多いこと,このうち被告Eと被告会社との間で締結した出版契約では,印税が8%とされたことが認められる。以上の事実に,本件詩が中国で著名な詩人であるAの創作によるものであること等の事実を総合すると,本件詩の使用料率としては,15%と認めるのが相当である。
オ 以上により,Aの損害額は,被告小説の価格に印刷部数,利用の割合及び使用料率をそれぞれ乗じて算出するのが相当であり,これによると,以下のとおり,約2万5000円となる(1000円未満四捨五入)。
  1400円×3000部×10/253×15%≒25000円
カ 被告らの主張について
(ア) 被告らは,著作権法114条3項に基づく損害額の算出に際して,被告Eが被告小説の出版により利益を得ていないことを斟酌すべきである旨主張する。
   しかしながら,著作権法114条3項に基づく使用料相当損害金の算定において,侵害者が利益を得ているか否かを斟酌する必要はないから,被告らの上記主張は理由がない。
(イ)(ウ)略 
(3) 著作者人格権侵害による損害
 前記6で認定したとおり,本件詩の翻訳を被告小説に掲載する際に題号が切除されるとともに改変され,Aの有していた著作者人格権(同一性保持権)が侵害されたものである。そして,証拠…によると,同人は,上記著作者人格権侵害行為により精神的苦痛を受けたものと認められる。
 侵害された著作物の内容,著作者人格権侵害の態様,当事者双方の社会的地位その他本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると,Aに対する慰謝料は,30万円が相当である。なお,被告らは,A及び原告らが中国に生活の本拠を置くことを斟酌すべきである旨主張するところ,慰謝料の額は,中国の貨幣価値に連動した額となるわけではなく,上記諸般の事情の1つとして,考慮するにとどめる。
(4) 名誉毀損による損害
 前記8で認定したとおり,被告小説の執筆ないし出版により,Aの名誉が毀損されたものである。そして,証拠…によると,同人は,上記名誉毀損行為により精神的苦痛を受けたものと認められる。
 前記8認定の名誉毀損の態様に加え,被告小説が3000部印刷されたものの2000部以上が在庫として回収され,流通した部数も1000部未満と僅少であること…,Aは,中国において著名であるが,日本語で書かれた被告小説が販売されたのは日本国内のみにおいてであり,Aが在住していた中国では販売されていないこと,その他本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると,Aに対する慰謝料は,50万円が相当である。……。
(5) 弁護士費用
 A及びその訴訟承継人である原告らが,本件訴訟の提起,遂行のために訴訟代理人を選任したことは,当裁判所に顕著であるところ,本件訴訟の事案の性質,内容,審理の経過,認容額等の諸事情を考慮すると,被告らの著作権及び著作者人格権侵害行為並びに名誉毀損行為と相当因果関係のある弁護士費用の額としては,10万円が相当である。
(6) 合計
 以上により,Aが被った損害は合計92万5000円となる。
 2万5000円+30万円+50万円+10万円=92万5000円
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/814BE5DF406ECBC049256F17003B0B0A/?OpenDocument

上記判決は、財産的損害の算定もあわせて紹介。一部省略してます。また、丸付数字を()にしています。

H16. 5.28 東京地裁 平成14(ワ)15570 著作権 民事訴訟事件
(6) 著作権侵害による精神的損害について
  原告らは,著作権侵害を理由に慰謝料を請求する。しかしながら,著作権のような財産権の侵害に基づく慰謝料を請求し得るためには,侵害の排除又は財産上の損害の賠償だけでは償い難いほどの大きな精神的苦痛を被ったと認めるべき特段の事情がなければならないものと解されるところ,本件全証拠をもってしても,上記特段の事情が存することを認めるに足りない。よって,上記請求を認めることはできない。
(7) 著作者人格権侵害による慰謝料について
 ア 前記5認定のとおり,本件各著作物は,本件各教材に掲載する際に改変され,原告Dを除く原告らの同一性保持権が侵害されたものと認められ,弁論の全趣旨によると,上記原告らは,これにより精神的苦痛を被ったものと認められる。
   そして,前記5認定の改変の態様からすると,改変された箇所は,いずれも文章の意味内容を直接変更するものではない箇所も多いこと,かなを漢字に変換したのは,本件各教材を学習する児童の学年に合わせて,その学習した漢字を習得させる目的もあるものと推認されること,教科書の掲載態様に合わせて改変した箇所もあること,他方,被告は,改変した本件各教材を長年にわたって発行してきたことその他本件に現れた諸事情を考慮すると,同一性保持権侵害行為に対する慰謝料として,1つの著作物に対応する1教材当たりそれぞれ10万円(別紙5(改変内容一覧表)の「認容額」欄記載のとおり)と認めるのが相当である。原告ら主張のとおり,上記慰謝料が本件各教材が初めに発行された年に発生するとして,これを原告ごとに年度別に集計すると,別紙12(損害集計表)の「同一性保持権侵害慰謝料」欄記載のとおりとなる。
 イ また,前記6認定のとおり,原告らの氏名表示権が侵害されたものと認められ,弁論の全趣旨によると,原告らは,これにより精神的苦痛を被ったものと認められる。
   そして,前記6認定のとおり,氏名は表示されていないが,上記原告らの氏名は,教科書によって認識することもできること,他方,被告は,改変した本件各教材を長年にわたって発行してきたことその他本件に現れた諸事情を考慮すると,氏名表示権侵害行為に対する慰謝料として,1つの著作物に対応する1教材当たりそれぞれ5万円(別紙7(氏名表示権侵害一覧表)の「認容額」欄記載のとおり)と認めるのが相当である。原告ら主張のとおり,上記慰謝料が本件各教材が初めに発行された年に発生するとして,これを原告ごとに年度別に集計すると,別紙12(損害集計表)の「氏名表示権侵害慰謝料」欄記載のとおりとなる。
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/4308EE2292F9480749256F17003B0B06/?OpenDocument

上記判決は、精神的損害の認定について。


ということで補足説明してみました。
財産的損害はある程度の明確に算出できますが、慰謝料は結構どんぶりです。
ここ1年の判決を見る限り、100万超えれば高額の部類ようです。
事案にもよりますが、人格権侵害の態様とかもあわせて見る必要がありそうです。
どの人格権侵害かでも違いがあるかもしれませんが、そういうことはまた改めて…。
普通に論文一本書けそうだな。