企業とのやりとりメールの公開〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(6)〜

登録商標一覧?〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(1)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050324#1111595733
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(2)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050406#1112753849
著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(3)
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050410#1113141421
教育目的利用〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(4)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050411#1113154362
著作権侵害の慰謝料〜著作権等の知的財産権関連の質問とその回答(5)〜
 http://d.hatena.ne.jp/okeydokey/20050414#1113412430

一部有料サービスを提供する某SNSでユーザーが不当と思われる理由で強制退会処分を受けました。それに対処するため運営組織から届いたメールを抗議の理由として公開したいと考えるのですが、その「管理者」および「統括管理者」と署名されたメールには、著作権を理由に公開すると告訴する旨が書かれており、抗議に難渋しております。そこで質問ですが一般にサービスを受けるユーザーがその運営組織から受け取ったメール等の書類が著作権等を理由に公開はおろか引用も出来ないなどと言うことがあるのでしょうか。もしあるので有ればその理由も含め教えていただきたいです。

という質問があり、以下のような回答をしました。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html


なぜ、引用ができないのか?ということに端的に答えるのであれば、
それは「公表された著作物」ではないからです(著作権法32条)。
法律上引用は「公表された著作物」からでないとできません。
しかしながら、あなたとその会社の1対1のやりとりのメールでは公表されたとは言いにくいです。
友人とのメールと違い秘匿性がないから「公表」と解釈上いう余地があるかもしれませんが、
メルマガなどの同じ文章を多数に発信するのとは異なる点にも注意が必要です。
著作者には公表権と言う(著作者)人格権があり、著作権法を文字通り解せば引用はできません。


ただし、それはあくまで著作物に対するもの。
そこに書いてあることをあなたの言葉で書き直せばいいのです。
著作権法上の制限は、著作物に対するものにすぎないので、
あくまでその表現をそのまま用いること、公表することができないだけです。
著作権とは別に、プライバシー権ということも考える必要がありますが、
企業とのやりとりですし、秘密事項ということではないでしょうから
(メールのやりとりに際し公表しない約束はしていないと思いますので)この場合には妥当しないでしょう。
(ちなみに、通信の秘密は関係ありません。)
なお「著作権法第四十二条の定めにより公開されることになるだろう。」とありますが、
四十二条は複製を許すだけで公表権は制限されませんので(第50条)その点は多少濁す方がいいように思います。


また「退会の根拠が記載されているため、文章が創作的であると判断されることがない」ともいえません。
裁判で弁護士が主張の根拠を書く文章(裁判手続上の文書)だって著作物です。
具体的な文章を見てみないと判断は難しいですが、「退会の根拠が記載されている」から「著作物でない」とはなりません。
もし「退会の根拠」を淡々と記載しているだけ(「事実の伝達にすぎない」第10条2項)なら、
著作物あたらない可能性はありますが、
それと同時に、威嚇的であることも表現しているなら、「思想・感情」をあらわしているともいえます。
つまり、見方にはよっては、その会社の威嚇を表現したものといえ、
それ自体あなたがみとめてしまっているということも可能です(だから即、著作物ともいえませんが)。


違法でない可能性も、もちろん否定できません。
そもそも「著作物」でない可能性も否定できませんし、
個人的には表現の自由著作者人格権(公表権)に常に劣るという「引用」のあり方も疑問です。
(場合によっては「公表」にあたるという解釈も可能でしょうが…)
ただ、著作物であることが肯定された場合には、法文上の「引用」にはあたらない、
ということになりますので、相手の主張も全く根拠がないとはいえません。


一般的な回答になりますが、以上の点を留意した上で判断されるのがいいと思います。

もしかしたら、あれ?という方もいそうですが、はてなでの回答はこれが限界です。
今回の文書については、「著作物」でない説もそれなりに理解できるのですが、
無難な回答としては、理由も含め、上記の通りでです。相談会ではないですし。



で、筆者ならどうするか?
本来このような文書は著作物にあたらないはずなので、
著作権を主張できない「事実の伝達にすぎない」メールを送ってもらいます。
(定型文があって、それにあてはめてもらえれば、いいんですけどね。)

       会社名
       担当某
○○様
  契 約 解 除 通 知
 契約条項◇◇により、契約を解除しました。
 解除理由は、○○様の△△という行為が◇◇に抵触したと判断したからです。
          以上

これでも著作物かというと、「そうだ」という人もありそうですが、
この場合だと「事実の伝達にすぎない」といってよいように思います。
そうでないとあらゆるものが著作物になってしまいます。
解除理由の判断提示をもって「思想・感情」を表現というといえなくもないですが、
その場合「創作」性が否定されます。
いわゆる「ありふれた表現」と考えれは結局「著作物」性は否定されます。
逆にいえば、今の文章がこの程度で、「退会の根拠」を淡々と記載」していればいいかと思います。
おそらく「著作物」にあたらない、という回答をされた方もそういう趣旨のように思います。
普通こういう形で感情的にならない書面で通知するだと思われるので。
それで、これを拒めば、先のメールをそのような文書として扱います、という一文を添えて請求します。
あわせて、新しい文書、もしくは送付がない場合は前の文書につき、
「通知書面は「著作物」でないので、公表する」旨告知します。
それで、訂正したものを送ってくれば、心の中で勝ちを叫んで、それを公表して争います。
送ってこなくても経緯を書いて、前のメールを、著作物でないと判断したとの理由で公表します。
裁判になっても「著作物」であることを主張するのは禁反言…。これで問題ありません。
(正確には、「問題ないはずです。」ですが…。)
まぁ、文章の内容によっては、強要罪(刑法第223条1項)で告訴しますけど…。
本来こういう文章は著作物ではない文章でするべきで、この文章もそうであるはずなのに、
著作物であるかのように主張して、告訴という「自由に対し害を加える旨告知して」、
表現行為という「権利の行使を妨害した」とか言ってみたり。>実際無理ありすぎ感大ですが…
ついでに、そのように読めてしまいますけど、どうします?という一文を加えてあげるのも手ですね。
さらに内容証明郵便で送ったりすると相手も折れるでしょう。わからんけど…。


いきなり、

1.「著作物」にあたらない理由
2.仮に著作物であるとしても、引用にあたる理由(「公表された」にあたる理由)
3.仮に「公表された著作物」であるとしても、表現の自由により違法性が阻却される理由

掲示した上で、引用し、その会社の問題点を糾弾する手もあると思いますが、
さすがにハイリスクなので(刑事にされると検察相手にしないといけない)、上記のような予防線ははるでしょうねぇ…。


と、これはあくまで「言いたい放題」での記事です。
責任をとれない以上、そんなことは個別の回答ではできません。
違法と判断される可能性もあるんですし……。あくまで自分ならこうするかな?程度です。


以上、回答送信後から考えていて文章でした。「終了」しましたので、掲載します。