「星の王子さま」の著作権消滅

星の王子さま」の著作権保護期間が終了し、数々の新訳本の出版が予定されているらしい。

新訳「星の王子さま」戦争 著作権切れ、各社から続々
 世界的なベストセラーで多くの人に愛読されている「星の王子さま」の著作権が1月下旬で切れたのを機に、唯一の日本語訳だった岩波書店版に加え、出版各社の新訳本が6月以降、次々と刊行されることになった。出版界では熱気を帯びた“星の王子さま戦争”が繰り広げられそうだ。
 「星の王子さま」はフランスの作家サンテグジュペリの1943年の文学作品。世界中で翻訳され、「大人のための童話」として、聖書や「資本論」に次ぐロングセラーとされている名作。
 日本語版は53年に、岩波書店からフランス文学者内藤濯氏の名訳で刊行。これまで約600万部が売れている。
共同通信) - 5月26日12時56分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050526-00000110-kyodo-ent

今日のテーマは、この期限切れの日の算出方法である。
実は調べかけたものの非常にいろいろやっかいがあった。
たださえわかりにくいのに…。ということで、間違いがあったらすみません。


まず、「星の王子さま」の原作者を確認しておこう。

アントワーヌ=ド=サンテグジュペリ (Antoine de Saint-Exupery)(サンテックス(Saint-Ex))
1900年6月29日〜1944年7月31日〔フランス〕
参考資料:
http://www.d4.dion.ne.jp/~warapon/data00/birth-0629.htm
http://www.d4.dion.ne.jp/~warapon/data04/death-0731.htm
http://www008.upp.so-net.ne.jp/pingo/sato.htm

サンテグジュペリサン=テグジュペリ)(愛称:サンテックス)の生没年は一般には上記のようにされているようである。
国立国会図書館データベースも

個人著者標目 Saint-Exupery,Antoine de (1900-1944) ‖Saint-Exupery,Antoine de.

となっている。
そして、フランス人作家の著作物でも著作権法上保護される。

著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)
(保護を受ける著作物)
第六条  著作物は、次の各号のいずれかに該当するものに限り、この法律による保護を受ける。
 一  日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)の著作物
 二  最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行の日から三十日以内に国内において発行されたものを含む。)
 三  前二号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物

まぁ、ここが否定されてしまうとあとが続かなくなってしまうので、
「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」性は認めてしまってください。
そして、著作権法上、他人の著作物を無断で翻訳することはできない(27条)。

(翻訳権、翻案権等)
第二十七条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

したがって、著作権保護期間中は、翻訳本の出版が制限されることになる。
(国内での翻訳権につき出版社が独占的に許諾を受けていたり、出版権が独占的に許諾されたり、
 複製権要許諾作品は単純に敬遠されたり…、とになく権利処理しないとできないことには違いない。)
しかし、著作権は一定期間しか存続しない。では、著作権の保護期間はというと、

(保護期間の原則)
第五十一条  著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2  著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)五十年を経過するまでの間、存続する。
(保護期間の計算方法)
第五十七条  第五十一条第二項、第五十二条第一項、第五十三条第一項又は第五十四条第一項の場合において、著作者の死後五十年、著作物の公表後五十年若しくは創作後五十年又は著作物の公表後七十年若しくは創作後七十年の期間の終期を計算するときは、著作者が死亡した日又は著作物が公表され若しくは創作された日のそれぞれ属する年の翌年から起算する。

となる。
ちなみに、フランス著作権法は、

知的所有権法典に関する1992年7月1日の法律(法律第92-597号)
第123の1条 著作者は、 その生存中、 その著作物を形式のいかんを問わず利用し、 及びそれから財産的利益を得る排他的確利を享有する。
2 著作者が死亡した場合には、 この権利は、 その権利承継人のために当該暦年及びそれに続く70年間存続する。
http://www.cric.or.jp/gaikoku/france/france_c1.html#123

と、日本より長期の保護期間なので、

(保護期間の特例)
第五十八条  文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約により創設された国際同盟の加盟国、著作権に関する世界知的所有権機関条約の締約国又は世界貿易機関の加盟国である外国をそれぞれ文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約著作権に関する世界知的所有権機関条約又は世界貿易機関を設立するマラケシュ協定の規定に基づいて本国とする著作物(第六条第一号に該当するものを除く。)で、その本国において定められる著作権の存続期間が第五十一条から第五十四条までに定める著作権の存続期間より短いものについては、その本国において定められる著作権の存続期間による。

は関係なく、また日本国内での保護期間は日本国内法によって判断することになる。
(日本国内では最大日本国民と同じしか保護されませんよ、でも本国より長く保護する必要はないので保護しませんよ)
つまり、日本国内での保護期間は、著作者の死亡後50年であり、
サンテグジュペリさんの場合、1944年7月31日の翌年1945年1月1日から起算するということになる。
(とりあえず順序立てて説明していくので、詳しい人も焦らないでね。)
このように考えると、サンテグジュペリ作品の著作権は1994年12月31日に保護期間が満了しているはずである。


しかしながら、敗戦国日本は、戦争中の戦勝国国民の財産に関して条約上の義務を負っている。

日本国との平和条約(昭和27年条約5号)
昭和27(1952)年4月28日午後10時30分 発効(内閣告示1)
第十五条【連合国財産の返還】
(c)
(i)
 日本国は、公にされ及び公にされなかつた連合国及びその国民の著作物に関して千九百四十一年十二月六日に日本国に存在した文学的及び美術的著作権がその日以後引き続いて効力を有することを認め、且つ、その日に日本国が当事国であつた条約又は協定が戦争の発生の時又はその時以後日本国又は当該連合国の国内法によつて廃棄され又は停止されたかどうかを問わず、これらの条約及び協定の実施によりその日以後日本国において生じ、又は戦争がなかつたならば生ずるはずであつた権利を承認する。
(ii)
 権利者による申請を必要とすることなく、且つ、いかなる手数料の支払又は他のいかなる手続もすることなく、千九百四十一年十二月七日から日本国と当該連合国との間にこの条約が効力を生ずるまでの期間は、これらの権利の通常期間から除算し、また、日本国において翻訳権を取得するために文学的著作物が日本語に翻訳されるべき期間からは、六箇月の期間を追加して除算しなければならない。
http://list.room.ne.jp/~lawtext/1952T005.html

これを受けて、

連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律(昭和二十七年八月八日法律第三百二号)
(目的)
第一条  この法律は、連合国及び連合国民の著作権に関し、日本国との平和条約第十五条(C)の規定に基き、著作権法 (昭和四十五年法律第四十八号)の特例を定めることを目的とする。
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%92%98%8d%ec%8c%a0&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S27HO302&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

という著作権の保護期間について特例が定められている。いわゆる戦時加算である。

(定義)
第二条  この法律において「連合国」とは、日本国との平和条約第二十五条において「連合国」として規定された国をいう。
2  この法律において「連合国民」とは、左の各号に掲げるものをいう。
 一 連合国の国籍を有する者
3  この法律において「著作権」とは、旧著作権法(明治三十二年法律第三十九号)に基く権利(同法第二十八条の三に規定する出版権を除く。)の全部又は一部をいう。
著作権の存続期間に関する特例)
第四条  昭和十六年十二月七日に連合国及び連合国民が有していた著作権は、著作権法に規定する当該著作権に相当する権利の存続期間に、昭和十六年十二月八日から日本国と当該連合国との間に日本国との平和条約が効力を生ずる日の前日までの期間(当該期間において連合国及び連合国民以外の者が当該著作権を有していた期間があるときは、その期間を除く。)に相当する期間を加算した期間継続する。
2  昭和十六年十二月八日から日本国と当該連合国との間に日本国との平和条約が効力を生ずる日の前日までの期間において、連合国又は連合国民が取得した著作権(前条の規定により有効に取得されたものとして保護される著作権を含む。)は、著作権法に規定する当該著作権に相当する権利の存続期間に、当該連合国又は連合国民がその著作権を取得した日から日本国と当該連合国との間に日本国との平和条約が効力を生ずる日の前日までの期間(当該期間において連合国及び連合国民以外の者が当該著作権を有していた期間があるときは、その期間を除く。)に相当する期間を加算した期間継続する。
(翻訳権の存続期間に関する特例)
第五条  著作物を日本語に翻訳する権利について、著作権法 附則第八条 の規定によりなお効力を有することとされる旧著作権法第七条第一項 (翻訳権)に規定する期間につき前条第一項又は第二項の規定を適用する場合には、それぞれ更に六箇月を加算するものとする。

なお、旧著作権法(明治三十二年法律第三十九号)は、http://www.cric.or.jp/db/fr/old_index.html
また、「連合国」の範囲についての詳細は、ここでは割愛。


では、どれだけ保護期間がのびるのか。
これを判断するには、サンテグジュペリさんが「星の王子さま」の「著作権を取得した日」が問題となる。
この点、出版日は、

1943.04.06英語版初版
1943.04.??仏語版初版
http://www.lepetitprince.net/sub_ochibo/history.html
英語版 The Little Prince に少し遅れて、フランス語版 Le Petit Prince が発売されました。【「星の王子さま」出版史 1943年4月】
http://www.lepetitprince.net/sub_RH/indexRHF.html

だそうです。(このサイト「星の王子さま」に関してかなりくわしく紹介されています。)
じゃあ、その日が「著作権を取得した日」?
当時のアメリカの著作権法(最初の発表はいずれもアメリカでなされた)からすれば、初版発表時?
でも、ベルヌ条約加盟のフランス人だからフランスの著作権法で創作時?
でも、これって現実的にはわからないのよね。
遅くとも初版出版時には創作されていたということで、立証の問題のような気もします。
ここまでくると、もうわけわかりません…。
ちなみに戦時加算は2条1項の昭和16年12月7日現在に存していた著作物については、
米国、フランスは、3794日加算することになりますが、

1941.12.8〜1942.12.31:024
1942.01.1〜1942.12.31:366*
1943.01.1〜1943.12.31:365
1944.01.1〜1944.12.31:365
1945.01.1〜1945.12.31:365
1946.01.1〜1946.12.31:366*
1947.01.1〜1947.12.31:365
1948.01.1〜1948.12.31:365
1949.01.1〜1949.12.31:365
1950.01.1〜1950.12.31:366*
1951.01.1〜1951.12.31:365
1952.01.1〜1952.04.27:117

                                                • -

TOTAL:3794
(※米国、フランスとの平和条約効力の日は1952.04.28)

その間に発生したした著作権については結構ややこしい…。
3794日加算しておけば問題ないんだけど…。
ところで、「星の王子さま」には「英語版」「仏語版」があるということになる。
いずれかが他方の翻訳なのかなんのか、よくわからないのだが、まぁ、どうでもいい。
仏語版から翻訳するには仏語版の著作権保護が終了していなければならないことはかわりない。
ただし、「著作権を取得した日」は前述のように必ずしも明らかではない。
そこで、ここではある程度客観的に判断できる出版日を基準としつつ、
英語版の出版よりも後でできるだけ早い日を「著作権を取得した日」と考えることにする。
すなわち1943年4月7日として考えることにする。
そうすると、前後加算される日数は次のようになる。

1943.04.7〜1943.12.31:269
1944.01.1〜1944.12.31:365
1945.01.1〜1945.12.31:365
1946.01.1〜1946.12.31:366*
1947.01.1〜1947.12.31:365
1948.01.1〜1948.12.31:365
1949.01.1〜1949.12.31:365
1950.01.1〜1950.12.31:366*
1951.01.1〜1951.12.31:365
1952.01.1〜1952.04.27:117

                                                • -

TOTAL:3308

3308日。設定が正確ではないが、実際のズレはここから計算すれば計算しやすいように思う。
つまり、1994年12月31日から3308日目まで存続することになる。

1995.01.1〜1995.12.31:365
1996.01.1〜1996.12.31:366*
1997.01.1〜1997.12.31:365
1998.01.1〜1998.12.31:365
1999.01.1〜1999.12.31:365
2000.01.1〜2000.12.31:366*
2001.01.1〜2001.12.31:365
2002.01.1〜2002.12.31:365
2003.01.1〜2003.12.31:365
2004.01.1〜2004.01.21:021

                                                • -

TOTAL:3308

となり、2004年01月21日まで存続していることになる。
あれ?今年は2005年のはず…?ということでさらに調べてみた。
すると、最初にくどいくらに没年を1944年と書いたが、
どうやら岩波書店および株式会社フランス著作権事務所は、

1944年7月30日〜翌45年9月20日までの間は消息不明期間として扱う為、死亡とはみなさない。
したがって、「サン・テグジュペリの死亡は1945年」

との立場をとっているそうなのである(参考文献は後述)。
すると1年ずれることになる。

1996.01.1〜1996.12.31:366*
1997.01.1〜1997.12.31:365
1998.01.1〜1998.12.31:365
1999.01.1〜1999.12.31:365
2000.01.1〜2000.12.31:366*
2001.01.1〜2001.12.31:365
2002.01.1〜2002.12.31:365
2003.01.1〜2003.12.31:365
2004.01.1〜2004.12.31:366*
2005.01.1〜2005.01.20:020

                                                • -

TOTAL:3308

したがって、2005年01月20日までということになる。
なお、
http://yukidarumabooks.ameblo.jp/day-20050523.html

http://slashdot.jp/articles/05/05/26/0532229.shtml?topic=102

によれば、2005年01月22日という扱いだったようなので、これを前提にすれば、
(ただし、他にこの明確に日付を記した記事を見つけることはできなかった。)

1996.01.1〜1996.12.31:366*
1997.01.1〜1997.12.31:365
1998.01.1〜1998.12.31:365
1999.01.1〜1999.12.31:365
2000.01.1〜2000.12.31:366*
2001.01.1〜2001.12.31:365
2002.01.1〜2002.12.31:365
2003.01.1〜2003.12.31:365
2004.01.1〜2004.12.31:366*
2005.01.1〜2005.01.22:022

                                                • -

TOTAL:3310

1943.04.5〜1943.12.31:271
1944.01.1〜1944.12.31:365
1945.01.1〜1945.12.31:365
1946.01.1〜1946.12.31:366*
1947.01.1〜1947.12.31:365
1948.01.1〜1948.12.31:365
1949.01.1〜1949.12.31:365
1950.01.1〜1950.12.31:366*
1951.01.1〜1951.12.31:365
1952.01.1〜1952.04.27:117

                                                • -

TOTAL:3310

となり、「1943.04.06」が「著作権を取得した日」として計算されたことになる。
上述の参考文献からすれば、「1943.04.06英語版初版」の前日であるが、
印刷時間などを考えると特に不合理とはいえない。
史実としての「著作権を取得した日」及び「サン・テグジュペリの死亡年」はわからないが、
権利者側はそういう解釈をしてきたということだけはここからわかる。
なお、もしかしたら一年損をしたのかもしれませんが、これで紛争は回避できたわけです。


なお、当然のことながら、岩波の翻訳版

星の王子さま (岩波少年文庫 (001))

星の王子さま (岩波少年文庫 (001))

の翻訳者内藤濯氏の著作権は存続中ですので、注意が必要です。挿し絵も同様です。
あくまで原著作物の著作権の保護期間が終了しただけです。
したがって、これから出版される新訳も当然ながら著作権の保護を受けるので注意が必要です。
ちなみに、国立国会図書館データベースによれば、

個人著者標目 内藤, 濯 (1883-1977) ‖ナイトウ,アロウ

とありますので、
1978年1月1日を起算に、著作権の保護期間が延長されない限り50年で、
2027年12月31日に消滅することになります。


さて、これを書きつつ調べている過程で、
http://www.lepetitprince.net/sub_copyright/LPPcopyright.html
というサイトを発見しました。

1944年7月30日〜翌45年9月20日までの間は消息不明期間として扱う為、死亡とはみなさない。
したがって、「サン・テグジュペリの死亡は1945年」

の記述もここに拠るものです。
そちらもでも著作権について考察されてますので、ご参照ください。
なお、同サイトによると、過去に英語版からの日本語訳はなされていないそうです。

連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律
(翻訳権の存続期間に関する特例)
第五条  著作物を日本語に翻訳する権利について、著作権法 附則第八条の規定によりなお効力を有することとされる旧著作権法第七条第一項 (翻訳権)に規定する期間につき前条第一項又は第二項の規定を適用する場合には、それぞれ更に六箇月を加算するものとする。
著作権法(明治三十二年法律第三十九号)
第七条 〔同前−翻訳権〕  著作権者原著作物発行のときより十年内に其の翻訳物を発行せざるときは其の翻訳権は消滅す
前項の期間内に著作権者其の保護を受けんとする国語の翻訳物を発行したるときは其の国語の翻訳権は消滅せず
http://www.cric.or.jp/db/fr/old_index.html

つまり、「1943.04.06英語版初版」から10年+3308日+6ヶ月で切れているということです。

1943.04.7〜1943.12.31:269
1944.01.1〜1944.12.31:365
1945.01.1〜1945.12.31:365
1946.01.1〜1946.12.31:366*
1947.01.1〜1947.12.31:365
1948.01.1〜1948.12.31:365
1949.01.1〜1949.12.31:365
1950.01.1〜1950.12.31:366*
1951.01.1〜1951.12.31:365
1952.01.1〜1952.04.27:117

                                                • -

TOTAL:3308

条約をきちんとみていないのですが、だいたいこんなところではないかと。
お気付きの点があればご指摘ください。

新訳「星の王子さま」続々 岩波版半世紀、独占権が消滅
 多くの人に読み継がれてきたサン・テグジュペリの「星の王子さま」が、来月から様々な出版社から新訳で続々と出版される。日本での著作権が今年1月で切れ、これに伴い岩波書店が持っていた独占的な翻訳出版権も消滅したためだ。倉橋由美子さんや池澤夏樹さんら著名作家による新訳もあり、新しい「王子さま」像が話題を呼びそうだ。
 「星の王子さま」は、フランス人作家のサン・テグジュペリが飛行機で飛び立ったまま行方不明になる前年の43年に英語版とフランス語版が出版された。日本では53年に岩波少年文庫として出た。日本での著作権保護期間は原則として著作者の死後50年まで。だが、この作品の日本での著作権を管理している会社によると、第2次世界大戦中に著作権が機能しなかった期間が「戦時加算」として加わるなどして10年以上延びたという。
 王子の純粋な心が読者の胸を打って日本だけで約600万部に達し、今なお売れ続けている大ロングセラー。出版社が次々に名乗りを上げている。6月には論創社、宝島社、中央公論新社が刊行。また、8月には集英社池澤夏樹さんの訳で出す予定だ。ほかにも準備中の出版社があり、10種類近く出るのではないかと見られている。
 岩波版はフランス文学者の故内藤濯(あろう)さんの訳。新訳本は新味を出すのに懸命だ。宝島社版の訳を担当した倉橋由美子さんは「内藤さんの訳はすばらしい。ただ、子どもの読者を意識して訳しておられるので、私は大人のために訳した。だから、これまでのイメージを裏切ってしまうかもしれません」と話す。
 出版を決めた4社の本はいずれも題名に「星の王子さま」を使う予定だ。岩波書店と内藤さんの翻訳の著作権の継承者である長男で作家の初穂さん(84)はこれに反発している。原題を直訳すると「小さい王子」。「星の王子さま」は、濯さんのアイデアだからだ。
 初穂さんは「新訳ならば、それにふさわしい題名をつくるべきだ」と話す。「『星の王子さま』の名前で出版するなら、法律などに詳しい人に相談して何らかの手を打ちたい」。ただ、著作権の専門家は、一般的に本の題名には著作権は及ばず、法的に争うことは難しいとみている。
 論創社は「あとがき」で、濯さんへの敬意を示す予定だ。

それにしても、なぜどの記事も「今年1月で」としかしていないか?
できれば権利者主張の消滅日を報道してほしかったと思う。
これで、報道のように新たな翻訳活動が活発になろう。
これこそパブリックドメイン入りの効用である。
ただし、同一性保持権は働いているのでご注意ください。
また、タイトルについてですが、
著作権の専門家は、一般的に本の題名には著作権は及ばず、法的に争うことは難しいとみている」というのは
間違っていないでしょう。
ただ、主張したいのであれば、「「星の王子さま」は、濯さんのアイデアだからだ。」などとしてしまうと、
かえってややこしくなってしまうように思います。