最後の聖域?国立国会図書館。公務員の給料って?

日頃は行政機関だけが注目されてますが、こんな記事がありました。
ということで、公務員の給料ってどうなっているの?国立国会図書館って?
それにしても、公務員の給料ってわかりにくいです。

国会図書館の職員過多 公務員改革に逆行“最後の聖域化”
年収1900万円、22人 人件費、4年で3億超増
 平成十三年一月の中央省庁再編から四年が経過し、国家公務員の削減が求められる中、国立国会図書館職員は毎年増え続け、人件費も増加傾向にあることが五日、産経新聞の調査で分かった。同館に十五人いる「専門調査員」は、国会議員の依頼に応じ国会活動の助言などを行うのが主な仕事だが、年収千九百万円前後と中央省庁の局長並み。さらに、衆参両院職員は四年前に比べ、わずか1・9%しか減っていない。これら国会職員が公務員改革の流れに逆行した“最後の聖域”化している実態が浮かび上がった。
 政府は十二年七月、省庁再編後の中央省庁の国家公務員定員を十年間で10%削減する方針を閣議決定。中央省庁の職員はこの四年間で約五十万人減少したとされる。だが、実態は郵政省職員の日本郵政公社への移管や国立大学などの独立行政法人化に伴うもので「純減」は一万八千人(2・1%)にとどまる。
 こうした中で、国会図書館は四年間で七十二人(約8%)も増加し、現在、定員は九百三十九人。十四年の「関西館」開設や開館日の増加が理由としてあげられているが、それに伴い人件費も約三億五千万円増加している。
 給与の「お手盛りぶり」も顕著で、国立国会図書館法という個別法で定められる図書館長の待遇は「国務大臣と同等とする」と定められ、月給は百六十二万六千円。諸手当を加えると年収は大臣と同等で三千万円を突破する。
 また、「専門調査員」は計十五人も配置され、いずれも中央省庁の局長級の月給(九十九万千−百六万九千円)。さらに別の七人が関西館長や総務部長の肩書で同等の給与が適用されている。
 中央省庁で同じ定員規模の金融庁(千二百二人)の局長がわずか三人であることに比べると、「国立国会図書館には幹部給与の者が多すぎる」(総務省幹部)との指摘がある。
 このほか、衆参両院事務局、法制局の十六年度の職員数は、省庁再編直前、十二年末の三千二百二十六人から六十二人しか減っていない。衆院法制局定員は逆に増加。参院法制局は七十六人のまま同数を維持している。
 中央省庁の場合、総務省が各省の適正人員の審査、評価を行うのに対し、国会職員はその対象外。「三権分立の原則から、行政府が立法府の定員に口出しできない」(政府関係者)のが原因で、これが「国会改革」の阻害要因になってもいる。
 こうした指摘に国立国会図書館幹部は、「議員への情報提供はもとより、三権分立のもとで行政府に対抗できる専門家が必要。森羅万象の法律を扱うので多すぎるとは思わない」と反論している。
     ◇
 【国立国会図書館立法府に属し唯一の国立図書館として内外資料を収集・保存する責任を負う。法律に基づき、国内出版物の納入が義務付けられており、所蔵図書は814万5191冊(15年度末)。一般国民も利用できるが、国会議員には法案の分析、国政審議にかかわる政治や経済など各分野の調査、資料提供サービスを行う。調査業務の中心的役割を担う「専門調査員」は、法律や財政などの専門家15人で構成。情報収集を行う国会議員への助言や、同図書館の調査担当者への指導を行う。10人は内部登用で、5人が警察庁や外務省からの出向者で占められている。
産経新聞) - 2月6日2時27分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050206-00000000-san-pol


まず、少しフォローしておくと、
人数の多い行政府と、少ない立法府を割合で比較するのもどうかと思います。
また、「お手盛りぶり」といっても、議員が議員の給与をきめるのとは少し異なるので、
正確に言えば、「お手盛り」ではないとは思いますが、
行政府には厳しく、自己の所属する立法府にはやさしく、という意味ではお手盛りかもしれません。
ちなみに、「三権分立の原則から、行政府が立法府の定員に口出しできない」のは当然だから、
ここに改革がすすまないのは、総理大臣のせいではなく、端的に国会議員のせいである。
もっとも、肥大化した行政府をスリム化して、立法も権限強化のため、
国会図書館の機能を強化するということも考えうる選択肢です。
筆者は、本当に機能しているのなら、このような選択を支持したいと思います。

国立国会図書館法(昭和二十三年二月九日法律第五号)


国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立つて、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される。
   第一章 設立及び目的
第一条  この法律により国立国会図書館を設立し、この法律を国立国会図書館法と称する。
第二条  国立国会図書館は、図書及びその他の図書館資料を蒐集し、国会議員の職務の遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門に対し、更に日本国民に対し、この法律に規定する図書館奉仕を提供することを目的とする。
第三条  国立国会図書館は、中央の図書館並びにこの法律に規定されている支部図書館及び今後設立される支部図書館で構成する。

とあります。
国会議員がいろいろな調べものをするときに、特に行政府をチェックすると言うとき、
行政の役人に説明を求めるだけではダメで、独自で調べなくてはならないのです。
もちろん、自らの秘書などもいるでしょうが、行政官の専門知識にたち向かなわなくてはならない、
立法府の権限強化の一助となるものであるなら、
国立国会図書館は、国会の付属機関として、強化するということはいいことと思います。
ただ、人数を増やせばそうなるという意味ではもちろんありませんが…。


さて、図書館長の待遇は「国務大臣と同等とする」、
「専門調査員」は計十五人も配置され、いずれも中央省庁の局長級の月給(九十九万千−百六万九千円)、
別の七人が関西館長や総務部長の肩書で同等の給与が適用されている、
というのは、上記意味でのお手盛りか。
具体的には次のように規定されている。

国立国会図書館法


第二章 館長
第四条
 国立国会図書館の館長は、一人とする。館長は、両議院の議長が、両議院の議院運営委員会と協議の後、国会の承認を得て、これを任命する。
○2 館長は、職務の執行上過失がない限り在職する。館長は、政治活動を慎み、政治的理由により罷免されることはない。館長は、両議院の議長の共同提議によつては罷免されることがある。館長の待遇は、国務大臣と同等とする。


第六章 調査及び立法考査局
第十五条  館長は、国立国会図書館内に調査及び立法考査局と名附ける一局を置く。この局の職務は、左の通りである。
一  要求に応じ、両議院の委員会に懸案中の法案又は内閣から国会に送付せられた案件を、分析又は評価して、両議院の委員会に進言し補佐するとともに、妥当な決定のための根拠を提供して援助すること。
二  要求に応じ、又は要求を予測して自発的に、立法資料又はその関連資料の蒐集、分類、分析、飜訳、索引、摘録、編集、報告及びその他の準備をし、その資料の選択又は提出には党派的、官僚的偏見に捉われることなく、両議院、委員会及び議員に役立ち得る資料を提供すること。
三  立法の準備に際し、両議院、委員会及び議員を補佐して、議案起草の奉仕を提供すること。但し、この補佐は委員会又は議員の要求ある場合に限つて提供され、調査及び立法考査局職員はいかなる場合にも立法の発議又は督促をしてはならない。
四  両議院、委員会及び議員の必要が妨げられない範囲において行政及び司法の各部門又は一般公衆に蒐集資料を提供して利用させること。
第十六条  この局に必要な局長、次長及びその他の職員は、政党に加入していても加入していなくても、その職務を行うに適当な者につき、国会職員法 の規定により館長がこれを任命する。
○2  館長は、更にこの局の職員に、両議院の常任委員会の必要とする広汎な関連分野に専門調査員を任命することができる。この専門調査員の待遇は、行政及び司法の各部門の一級官吏と同等とする。


では、行政庁の特別職、一般職の職員の給与はどうなっているのか?というと。

特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年十二月十二日法律第二百五十二号)
(目的及び適用範囲)
第一条  この法律は、次に掲げる国家公務員(以下「特別職の職員」という。)の受ける給与及び公務又は通勤による災害補償について定めることを目的とする。
一  内閣総理大臣
二  国務大臣
三  会計検査院長及びその他の検査官
三の二  人事院総裁及びその他の人事官
四  内閣法制局長官
五  内閣官房副長官
六  内閣危機管理監
六の二  内閣官房副長官補、内閣広報官及び内閣情報官
七  常勤の内閣総理大臣補佐官
七の二  副大臣及び法律で国務大臣をもつてその長に充てることと定められている各庁の副長官(以下「副長官」という。)
八  大臣政務官及び長官政務官
九  国家公安委員会委員
十  公正取引委員会の委員長及び委員
十の二  国家公務員倫理審査会の常勤の会長及び常勤の委員
十の三  総合科学技術会議の常勤の議員
十一  公害等調整委員会の委員長及び常勤の委員
十二  社会保険審査会の委員長及び委員
十二の二  労働保険審査会の常勤の委員
十二の三  公害健康被害補償不服審査会の常勤の委員
十三  地方財政審議会の会長及び委員
十三の二  食品安全委員会の常勤の委員
十三の二の二  原子力委員会の委員長及び常勤の委員
十三の二の三  原子力安全委員会の常勤の委員
十三の三  中央労働委員会の常勤の公益を代表する委員
十三の三の二  中央更生保護審査会の委員長及び常勤の委員
十三の四  宇宙開発委員会の委員長及び常勤の委員
十三の五  土地鑑定委員会の常勤の委員
十三の五の二  情報公開審査会の常勤の委員
十三の五の三  証券取引等監視委員会の委員長及び委員
十三の五の四  公認会計士・監査審査会の会長及び常勤の委員
十三の五の五  国地方係争処理委員会の常勤の委員
十三の五の六  電気通信事業紛争処理委員会の常勤の委員
十三の六  航空・鉄道事故調査委員会の委員長及び常勤の委員
十四  運輸審議会の常勤の委員
十五  宮内庁長官侍従長東宮大夫及び式部官長
十六  特命全権大使(以下「大使」という。)及び特命全権公使(以下「公使」という。)
十六の二  国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号)第二条第三項第八号 に掲げる秘書官及び裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)に定める裁判官の秘書官(以下「秘書官」という。)
(十七号以下、略)
内閣総理大臣等の給与)
第二条  前条第一号から第十六号の二までに掲げる特別職の職員(以下「内閣総理大臣等」という。)の受ける給与は、別に法律で定めるもののほか、俸給、調整手当、通勤手当及び期末手当(国会議員から任命されたものにあつては俸給、調整手当及び期末手当、秘書官にあつては俸給、調整手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当、期末手当、勤勉手当及び寒冷地手当)とする。
第三条  内閣総理大臣等の俸給月額は、内閣総理大臣等のうち大使、公使及び秘書官以外の者については別表第一に、大使及び公使については別表第二に、秘書官については別表第三による。
(2項以下、略)


別表第一 (第三条関係)
官職名            俸給月額
内閣総理大臣         二、二二七、〇〇〇円
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国務大臣
会計検査院長
人事院総裁          一、六二六、〇〇〇円
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内閣法制局長官
内閣官房副長官
副大臣及び副長官
公正取引委員会委員長
国家公務員倫理審査会の常勤の会長
宮内庁長官          一、五五七、〇〇〇円
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検査官(会計検査院長を除く。)
人事官(人事院総裁を除く。)
大臣政務官及び長官政務官
公害等調整委員会委員長    一、三二八、〇〇〇円
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内閣危機管理監
常勤の内閣総理大臣補佐官
侍従長            一、三一八、〇〇〇円
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内閣官房副長官補、内閣広報官及び内閣情報官
国家公安委員会委員
公正取引委員会委員 等    一、三〇一、〇〇〇円
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公害等調整委員会の常勤の委員
社会保険審査会の委員長及び委員
労働保険審査会の常勤の委員
公害健康被害補償不服審査会の常勤の委員
中央労働委員会の常勤の公益を代表する委員
情報公開審査会の常勤の委員
公認会計士・監査審査会の常勤の委員
東宮大夫 等         一、一四六、〇〇〇円
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と、かなり省略しましたが、こんな感じになっています。
一般職については、
一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年四月三日法律第九十五号)
という法律がありますがややこしくて手に負えないので割愛します。
(国会職員や裁判官、裁判所職員はここに含まれません。本法他国家公務員法2条。)


次に、国会の職員の給与は?ということで
上記「特別職の職員の給与に関する法律」には

(国会職員の給与)
第十一条
 第一条第三十号に掲げる特別職の職員の受ける給与の種類、額、支給条件及び支給方法は、国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)及び同法の規定に基く国会職員の給与等に関する規程の定めるところによる。

とあります。で、次をみると、

国会職員法(昭和二十二年四月三十日法律第八十五号)
第六章 給与、旅費、災害補償及び年金等
第二十五条
 国会職員は、その在職中給料を受ける。
○2 国会職員は、給料の外、必要な手当その他の給与及び旅費を受けることができる。
○3 国会職員の給料、手当その他の給与の種類、額、支給条件及び支給方法並びに旅費については、別に法律(これに基く命令を含む。)で定めるものを除く外、両議院の議長が、両議院の議院運営委員会の合同審査会に諮つてこれを定める。

となっており、これ以上はわかりませんでした。

※「国会職員の給与等に関する規程(抄)」を別途
 http://page.freett.com/okeydokey/に掲載しました。
                   2005/2/18追記

なお、国会議員の歳費については、
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律(昭和二十二年四月三十日法律第八十号)
というものがあります。


さて、図書館長の待遇は「国務大臣と同等とする」というところに話を戻すと、
国務大臣会計検査院長人事院総裁に準じるものということになります。 
ちなみに、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」の第1条には、

各議院の議長は内閣総理大臣の俸給月額に相当する金額を、副議長は国務大臣の俸給月額に相当する金額を、議員は大臣政務官の俸給月額に相当する金額を、それぞれ歳費月額として受ける。

とありますので、副議長と同等ということになります。この時点ですでに疑問符がつきます。
また、国立国会図書館の館長を、行政庁にいう国務大臣以外の庁の長官ということでいえば、
特別職で、内閣法制局長官宮内庁長官というのがありますが、これと比較しても高額ですし、


一般職の職員の給与に関する法律 に基づく人事院規則でも、

人事院規則九―四二(指定職俸給表の適用を受ける職員の俸給月額)
(昭和四十八年九月二十六日人事院規則九―四二) 
区分 官職             号俸
イ  事務次官
   会計検査院事務総長
   人事院事務総長
   内閣法制次長
   宮内庁次長
   警察庁長官
   金融庁長官          十一号俸
ロ  警視総監           十号俸
ハ  外局(国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第三項の庁をいう。以下同じ。)の長官
   会計検査院事務総局次長 等  九号俸
ニ  国立がんセンター総長 等   八号俸
ホ  内部部局(国家行政組織法第七条第一項の官房及び局をいう。)の長 等
                  七号俸
ヘ  外局の次長(国家行政組織法第十八条第三項の規定によるものをいう。) 等
                  六号俸
ト  前各項に掲げる官職以外の官職 一号俸から五号俸までの号俸のうち、官職ごとに指令で定める号俸

備考
1 当分の間、外局の長官、会計検査院事務総局次長、内閣府審議官、公正取引委員会事務総長、警察庁次長、総務審議官、外務審議官、財務官、文部科学審議官、厚生労働審議官、農林水産審議官、経済産業審議官、技監、国土交通審議官、地球環境審議官及び経済社会総合研究所長については、指令で別段の定めをした場合には、この表のロの項又はニの項に掲げられているものとする。
2 略

となっており、警察庁長官や、その他外局の長官と比較するとさらに大きくなります。
さすがに、国務大臣と同等のいうのは贔屓目にみても高すぎるように思われます。
もっとも、ちょっと内閣法制局長官レベルには仕事内容によっては比較としていいのではないか、
とも思います。図書館館長という世間のイメージからは高すぎるのかもしれませんが(失礼)、
議員をサポートして、行政を、特にチェックする場面での仕事の重要性にかんがみるなら、
枠組みとしては、高くみた場合に内閣法制局長官レベルということも可能ではないかと思うのです。
いずれにせよ、「国務大臣と同等とする」とは、任命形式的にも、実体的にも厳しいかと。


「専門調査員」計十五人が、中央省庁の局長級の月給(九十九万千−百六万九千円)ということらしいが、
その内容に次第であろう。
結局行政の局長に対応する(能力をもつ)調査官が必要であるならば、そのようにいうこともできるのである。
少人数の立法と行政府に対応して調査員をおくなら、
1府12省庁でも13人、重要な外局にも対応させるなら、
15という数字は決して多すぎるとはいえないのではないか?
筆者としては、人数を減らすというよりは、権限と評価に見合うだけの仕事をしているのか、
議員の方々が活用されているのか?ということの方が気になる。
そして、現在記事によれば、「10人は内部登用で、5人が警察庁や外務省からの出向者で占められている」
そうであるが、行政庁からの出向者のポストに5つ裂かれていることが問題であろうし、
行政府チェック機能という意味ではさらに疑問が残るし、
(行政府の人間を使うのなら、行政府に聞けば済むだけのこと。)
さらに、10人が内部登用者ということは、国会職員はよほどの少数精鋭なのか?
理想論の枠組みとしては、維持して問題ないと思うのだが、
理想で要求されている機能を発揮しているのか、というと疑問が残る。
そのような意味では、国立国会図書館の改革をのぞみたいと思う。


ちなみに、こういうサイトがありました。参考まで。
http://www.geocities.jp/policy_research_institute/diet.html