公開番組観覧応募と受信料契約台帳の照合

受信料払わなければ、公開番組入場させず…NHK方針
 NHKは公開番組の観覧申し込みについて、受信料を支払っている人に限定する措置を取ることが、13日分かった。NHKが公開番組への入場で受信料支払いを条件とするのは初めて。増加する受信料不払いへの新たな対応策となる。
 対象となる番組は、「NHK歌謡コンサート」(9月27日放送分)。東京・渋谷のNHKホールを会場に、鳥羽一郎さんや藤あや子さんが出演する。応募者の中から抽選で1500組3000人に入場整理券を送る。その前に応募はがきと受信料の契約台帳を照合し、支払いを確認する。
 NHKの受信料は、番組制作費着服事件など一連の不祥事をきっかけに支払い拒否・保留件数が増加し、7月末で117万件に達した。不払いの理由として、不祥事とともに「受信料を払っていない人でも番組が見られる」という不公平感の広がりが指摘され、「受信料を払っていない人が番組観覧できるのはおかしい」との声もNHKに寄せられているという。
 NHK経営広報部では、「今後はアンケート調査などを行い、こういった試みについて検討していく」としている。
(読売新聞) - 8月13日11時37分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050813-00000203-yom-ent

ということだそうで、
日本放送協会NHK)が、放送受信契約に関して収集し保有する個人情報を、
公開番組の観覧に際して照合のために利用することが、目的外使用にあたらないかどうかの検討をしてみたい。
まずは、「NHK個人情報保護方針」をみると、

 日本放送協会(以下「NHK」という。)は、受信料によって支えられる公共放送機関として、視聴者の皆様の個人情報の重要性と、個人情報が個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることを深く認識しています。視聴者の皆様の個人情報を慎重かつ適正に取り扱うことは、NHKの重要な責務です。
 現在、世界レベルでのインターネットの普及等により、高度なコンピューターネットワークが構築され、大量の個人情報が瞬時に伝播される環境が出現しています。このような高度化した情報通信技術社会において、公共放送の使命達成のためにより適正に個人情報を取り扱うことを目的に、以下の基本方針を定め、個人情報の保護に取り組んでいくことを宣言します。


2 個人情報保護施策の実施
 個人情報の利用を適正に行うための措置をとるとともに、個人情報の盗難、改ざんおよび漏洩等によるプライバシーその他の権利の侵害を防止するため、適切な安全管理措置を講じます。
 個人情報の利用にあたっては、NHKが報道目的など個人情報保護法第50条第1項に該当する目的で個人情報を取り扱う場合は、別に「報道・著述・学術研究分野に係る個人情報保護規程」を定め、また、それ以外の目的で個人情報を取り扱う場合は、別に「NHK個人情報保護規程」を定め、それぞれの規程に則って個人情報を適正に取り扱います。
http://www.nhk.or.jp/privacy/

とあり、「NHK個人情報保護規程」をみると、

(目的)
第1条 この規程は、NHK個人情報保護方針に基づき、個人情報を適正に取り扱うために必要な事項を定めることを目的とする。
(利用目的の特定)
第4条 個人情報を取り扱うにあたっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り具体的に特定する。
(利用目的による制限)
第5条 特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱う場合は、あらかじめ本人の同意を得る。
http://www.nhk.or.jp/privacy/4kitei.html

とあり、「放送受信契約に関する個人データの利用目的」をみると、

<個人情報の利用目的の説明>
NHKが放送受信料の契約・収納活動や放送の受信に関する活動を通じて取得した、皆様の個人情報の利用目的は、次のとおりです。
(1) 放送受信契約締結のための活動、放送受信料の収納活動
(2) 免除基準の適用
(3) 放送の受信に関する相談業務、NHK共聴の維持・運営
(4) 放送やイベントのお知らせ
(5) 放送文化・普及・受信に関する調査へのご協力のお願い
(6) B−CASカードユーザー登録のための?B−CASへの情報提供
http://www.nhk.or.jp/eigyo/hogo/index.html

とある。
そこで、本件公開番組の観覧に際して照合のために利用することが、これらの利用目的にあたるかをみる。


(1) 放送受信契約締結のための活動、放送受信料の収納活動
この点について、補足として「訪問、郵送、電話などによる放送受信契約締結をするための活動、
放送受信契約者の方から放送受信料を収納するための活動全般を指します。」とある。
「放送受信料を収納するための活動」であり、「公開番組」の実施が「放送受信料を収納するための活動」であれば、
本条にあたることになるが…。


(3) 放送の受信に関する相談業務、NHK共聴の維持・運営
この点について、補足として「NHK共聴とは、難視聴改善のためNHKと施設の加入者が共同で運用している
受信施設のことですが、その適切な維持・運営のために、加入者状況の確認を適宜行っています。」とある。
これにあたらないことについては問題なかろう。


(4) 放送やイベントのお知らせ
この点について、補足として「デジタル放送の受信に関するサンプル調査などへのご協力のお願いに利用する場合があります。」
「公開番組」の案内の送付について、個人情報を利用することについては問題がない。
たとえば、公開番組について放送で一般公募せずに、契約者のみに案内状を送付して、
それを返信することで応募とするような場合には問題がないように思われる。
しかし、“照合”のために利用が「お知らせ」にあたるかというと疑問である。


(5) 放送文化・普及・受信に関する調査へのご協力のお願い
「公開番組」の実施がこれにあたるというのは困難であろう。


(2) 免除基準の適用
(6) B−CASカードユーザー登録のための?B−CASへの情報提供
これらにあたらないことについても問題なかろう。


そうすると、今あるNHK自身が定めた「NHK個人情報保護方針」によれば、
「公開番組」の実施が「放送受信料を収納するための活動」という考え方をとらない限り、
目的外利用にあたるのではないだろうか?


一方で、募集要項を抜粋して引用すると、

受信料をお支払いいただいている皆さまを対象とした公開番組の観覧募集のお知らせ


 このたびNHKでは、受信料をお支払いいただいている皆さまを対象に、感謝の気持ちを込めて、下記のとおり、「公開番組」の観覧募集を行います。
 NHKは、受信料で成り立っている公共放送です。ひごろからNHKを支えてくださっている皆さまが、番組観覧を通じて、楽しい時間をお過ごしいただくとともに、NHKの事業全般へのご理解を深めていただければ幸いです。
  なお、応募された方々の中から、アンケート調査をお願いし、NHKが今回のような「受信料をお支払いいただいているお客さま向けのサービス」を試みることについて、感想やご意見をお伺いする予定です。今後のNHKの事業活動の新たな展開に役立てていきます。なにとぞご理解とご協力をお願いいたします。


日 時 平成17年 9月27日(火)
番組名 NHK歌謡コンサート
応募いただける方 応募の時点で、受信料をお支払いいただいている方(新たに受信料をお支払いいただける方、現在受信料が免除されている方も含みます)


入場申込 入場無料
郵便往復はがき(私製を除く)の
「往信用裏面」に郵便番号・住所・名前・電話番号
「返信用表面」に郵便番号・住所・名前
を明記してお申し込みください。


応募の際にいただいた情報は、抽選結果のご連絡のほか、番組やイベントについてのアンケート調査へのご協力のお願い、受信料のお願いに使用させていただきます。
http://www.nhk.or.jp/eigyo/event/

となっている。
ここではこの応募の際に提供した個人情報に関して、利用目的が書かれているが、
すでに保有している契約者情報との照会については明記されてはいない。
おそらくはこの応募をもって、契約情報との照会という「特定された利用目的の達成に必要な範囲を超え」る場合の
「本人の同意」ということになるのかも知れないが……。


このようにみてみると、受信契約者情報を公開番組の応募資格確認に用いることは、明記された目的にあたらず、
これを当該目的利用することは「特定された利用目的の達成に必要な範囲を超え」るため、別途同意を得る必要があるが、
この募集要項からは、応募によって、別途保有する個人情報の目的外利用の同意とみることができるかということになる。
抽選の際に「照会します」とでも明記されていれば「同意」とみることができようが、
「視聴者の皆様の個人情報を慎重かつ適正に取り扱うことは、NHKの重要な責務です。」とする
「NHK個人情報保護方針」を重視すれば、個人情報の取扱いと関連して改善すべき点は多いのではないだろうか?